2009.12.11

12月4日備忘録

20091210
イアン・マキューアン 著  『初夜』 On Chesil Beach 読了。

著者のHPで美しい装丁写真と解説を見てから、翻訳されるのを待っていたので、予約買い。
これからいろいろ手を入れて研ぎ澄まして短編に仕上げるはずだった。
もしくは、これからいろいろ手を入れて長編に仕上げるはずだった。

・・・のだが、このテーマに興味がなくなったので、文字通りリリースしてしまった。みたいな小説だった。

でもでも、最終章で中年を過ぎた主人公が若き日の自分と数時間だけの妻について回想するところには、突然感動。crying

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2009.09.12

読了記録『贖罪』

61d3hbd54fl__sl500_aa240_『贖罪』 イアン・マキューアン 著 読了。

読後しばらくあまりの感動で、気持ち的に、立ち上がれないかのような状態にさせられる。実際には立ち上がり、歩き回り、日常生活の動作をしているけれど、意識はこの小説の世界からなかなか抜け出せない。

主人公(といっていいかな)のブライオニーが、その少女ゆえの嘘で、姉セシーリアとお屋敷の使用人の息子ロビーとの、本当に本人たちも気付いたばかりの愛を引き裂いてしまう。第二次世界大戦の時代をはさんで、作家となったブライオニーは、『贖罪』の小説を書き続ける。何度も推敲をかさね、彼女の人生の終りが見えてきたころやっと最終稿は完成する。

その小説のなかでは、セシーリアとロビーは困難を乗り越えて再会できているが、(著者マキューアンが小説家ブライオニーに言わせているように、それは、すべての読者の望むところである。)実際は彼はフランスで戦死していたということが語られ、読者はやはりという落胆を感ぜずにはいられない。


小説では贖罪はできないのか・・・


マキューアンは『贖罪』という小説のなかで、ブライオニーに『贖罪』という小説を書かせていて、こういう入れ子の構成をとることで語りたかったことがあるはずだが、今はそこまで考える余裕がないので、再読してゆっくり考えたい。

心に引っかかる表現の数々に立ち止まりたいという思いと、物語の先に進みたいという思いがかちあって、それぞれであっちが勝ったり、こっちが勝ったり。もどかしかった。(特に若い二人がお互いの愛に気づき確かめ合う場面がとても美しかった。)取りこぼした言葉を拾いに戻るには再読が必要だが、図書館で借りてきた本だったぁー。

文庫版を買うべきか。それに、映画化もされているので、DVDも探してしまいそうだ。


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2009.08.13

読了記録『きのうの世界』

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終盤まではすんごくおもしろかったのですが、、、、

この結末ですか。

カラスがガラスを・・・


でも、きっとまた、
恩田作品を手にとってしまうだろう自分を予感する作品でした。

結末はともかく、そこまでの謎また謎に激しく引き付けられます
身近なところに『異界』がある。それが、舞台となっているM町には現実にあった・・・(のですが、秘密にしておかなくても・・・と突っ込みたくもなるけど。coldsweats01

次は何を読もうかな。happy01

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読了記録『文明崩壊』

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イースター島で、最後の1本だった木を切り倒した人は何を思っていたのか。


様々な地域の環境破壊がなぜ、どのように起きたのか、ある地域ではなぜ、どのように免れたのかが検証され、今、これから何ができるのかを考察した本です。かなり質、量ともに読み応えがあり、読むのにだいぶ時間がかかりました。

ある意味当然、希望はあると書いてありますけど、読み終わってもとてもそうは思えず。。。

独裁者が国民の生活を犠牲にし、抵抗勢力は虐殺することも辞さずに環境保護を断行するとか、今から全員がベジタリアンになるとか、いたるところで一人っ子政策がなされるとかが、全地球規模でおこらないとダメなんじゃないのと思わせられました。

既に、最後の木を切るような行いを、私も毎日毎秒行っているのだと思います。


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2009.07.07

読了記録

20090707
『廃墟建築士』  三崎亜記・著

表題作のほかに3編の小説がおさめられています。
どの作品も不思議な設定が描かれていて、最初は星新一を思いながら読んでいましたが、いや、違う。でもどこかで出会ったことのある感じ・・・この作家の作品を読むのは初めてなはず・・・思い出せなくて気持ちが悪い・・・
などと、本筋とは違うところで呻り、あっ、小川洋子作品の雰囲気かも・・・と思ってスッキリしてから本気で読みました。coldsweats01

シュールで、そして静か。悲劇とか喜劇とか、ハッピーエンドなどという言葉の範疇に入らない読後感。経験したことがあるはずのない状況のストーリーなのに、なぜか懐かしい感じでした。出会えてよかった1冊です。(装丁も素敵!)

ところで、「笑い」とは無縁の小説でしたが、個人的に仕事柄、「1種廃墟」「2種廃墟」はたまた「みなし廃墟」の件ではバカ受けしてしまいました。winkもちろん、ここは笑うところではありません。

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2009.06.25

読了記録

20090623
『カソウスキの行方』 津村記久子・著

津村さんの『ポトスライムの舟』を読んだときに、うら若き女性に色気めいた雰囲気がないのは読んでいて辛いなぁと思ったのでしたが、やっぱり?『カソウスキの行方』というタイトルの作品があることを知り、読まなくちゃ!と思った次第です。

さてさて「カソウスキ」とは「仮想好き」のことで、主人公イリエ(やっぱり苗字です。)は、やりがいの感じられ無い職場で、まったく恋愛対象とは思っていなかった同僚男性を「好きと仮想して」、それに基づいて彼をひそかに観察したりその行動を記録したりすることにより、なんとか出社できている・・・とストーリーは進みます。

薄くはあるけど紛れも無い恋愛が描かれていて、正直ホッとしました。最初は「とうとう仮想でなくては恋愛もありえない状況なのか・・・」と思ってたものですから。

自分の好みとしては、虚構の中の恋愛くらいはドロドロしてて欲しいかもcoldsweats01と思わなくも無いのですが、虚構(仮想)と現実の境界って実際どこよ?というのを問いかけられてしまったので、「カソウスキ」でも案外危険dangerなんだわーと思ったのですが、つまり何が言いたいのでしょう>自分。。。sign02

2冊続けてこの作家を読みましたが、笑いの要素も多くて基本的には楽しい読書ができました。また他の作品も読もうと思っています。


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2009.06.09

読了記録

20090609
『ポトスライムの舟』 津村記久子 著

芥川賞受賞作ですね。
あらすじはこちらにお任せします。

まず一番に感じたことは、色気のない作品だということ。そもそも主人公は29歳の女性なのにナガセだし。苗字かよ!みたいな。coldsweats01

自分もいい年なので、20代の人をどうも我が子とまではいかなくても、慈しむような気持ちで見てしまうようで、そこに描かれている、若いのに恋愛の可能性のかけらも感じさせない日常に対して、『いのち短し恋せよ乙女』というフレーズが頭の中をリピートしてしまいました。(注・自分の20代が数々の恋愛に彩られていたわけでは勿論ありません。think

それでも、彼女をとりまく人々(主な登場人物がすべて女性なのは重要なポイントだと思う)は、母性に近いような愛情で、ゆるくではあるけど絶対にほどけないように結びついているように思います。読み終わってみて、男性と女性の違いをまざまざと見せつけられたような気がしました。(それを対比させて書いている部分はないのですが。)

ナガセは幸せなのだろうか。幸せが物質的なものでは測れないことは重々承知していながらも、「彼女には助け合って暮らしていける友人や母がいるからまだ幸せな方だ」というなら、これからの世代の人たちの将来を憂慮し、気持ちが重たくなるのでした。

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2009.05.27

読了記録

20090527
『エル・スール』 アデライダ ガルシア=モラレス 著


不思議な感覚の残る本で、読み終わってすぐ、もう一度読みました。

「父親を自殺で失った少女の精神的な成長が本人の独白で綴られている話です」
と言ってしまうと、そんな小説じゃぁなかったよなぁ・・・という感じがしてきます。
1度目は主人公の少女に寄り添って読んで泣き、ストーリーを知って読む2度目は、周辺の人々それぞれの苦しみや悲しみの意味が判って読んだからか泣けて泣けて。

結局のところ何が解決するでもなく、何を乗り越えたわけでもないですが、主人公はすべて抱えたまま、それでもしっかりと歩んで行くだろうという希望を感じさせて終わります。それでも、当分の間3度目は読むまい。weep


この小説を基にした映画が、先に世に出ていて、映画ファンの間では有名な映画らしいです。是非、見たいと思っています。というのも、この不思議な読後感は、物語のによるところが大きい気がすからです。家族それぞれの孤独や絶望の舞台であるスペインのぽつんとした一軒家。表紙の写真だけがたよりですが、それが映像で見られるわけですので。


ところで、今読みかけのものも含めて、最近翻訳物を続けて読んでいますが、どれも素晴らしい訳で嬉しい今日この頃です。happy01

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2009.05.22

読了記録 ねたばれあり

20090521
『土曜日』 イアン・マキューアン 著


「面白い」と「楽しい」は違うのだと、今更ながら思いました。
というのは、この本、面白かったとはいえるけど、読んでいて楽しかったとは?

舞台はロンドン。9・11のテロ後、いつイラク攻撃が始まるかというとき。その攻撃に反対する大規模デモが行われる土曜日。ある外科医がこの土曜日に何を考え、何をしたのかが書かれています。(しかも異常に詳細に。一瞬プルーストの名がよぎって、読みとおせないかと思った。coldsweats01 それと、まず最初にソール・ベローの『ハーツォグ』という小説の一節が引用されていて、いきなり学生時代の暗い思い出を呼び起されいやな予感が・・・長くなるので、この話は後日。)

彼は40代。仕事・家庭・もちろん経済的にも、成功者です。敢えてこういう人物設定にされているのでしょうが、小説の中でなければありえないくらい満ち足りた人生を送っています。しかしながら、この幸福が実はとても不確実なものであることを意識せざるを得ない主人公。

途中、彼と娘がイラク(=フセイン)攻撃の是非について口論になる場面があります。ここでの父の意見は、「報復テロは激化するかもしれない。でも、フセインを倒すことでイラクが民主化し、報復テロなど取り越し苦労に終わるかもしれない。もちろん、戦闘においては犠牲者がゼロということはないが、それはフセイン独裁政権による抑圧・虐殺の被害者よりはるかに少なくすむだろう。」というものです。


私はこの部分を、西側諸国の人間として父親の意見に沿って読んでいました。(読後にそれでよかったのか考えさせられることになるのですが。)


満ち足りた土曜日が終わりかけた家族の団らんの時間に、主人公の家に暴漢が押し入ります。彼とは昼間、この外科医が反戦デモを避けて侵入した道路で自動車の接触トラブルがあったのでした。彼は進行性の脳の病気を持っていて遠くない将来命も失うであろうことが、優秀な医者である主人公には言い当てることができたのです。そして、特別にその治験者リストに加えてやるという嘘により彼を油断させ、息子と力を合わせて彼を階段から突き落として窮地を脱します。

警察も引き上げたところに、病院から緊急手術の呼び出し。患者が先ほどの暴漢だということは判っていますが、彼は病院に行き外科医としての素晴らしい仕事をやりきって、家に戻りベッドに入ろうとするところで、やっと長かった土曜日が終わります。(日付はとっくに日曜日になっていますが。)

眠りに就く前、彼は考えます。明日は警察や家族を説得しなければ。あの病を持つ男を起訴しないように、と。


読後まず思ったことは、自分が憲法9条というものを持つ国の人間だということを忘れていたなぁと・・・なんだかこの英国人の外科医に念押しされたような気がしました。

独裁者・テロリスト・犯罪者に対する暴力による抑止はそれぞれどう違うのか。独裁者による虐殺・テロリズム・犯罪による被害者として、あるいはたとえ少数であっても戦争の被害者として、あるいは不治の病によって、自分の一つしかない命を失うということは、その人にとってどういう違いがあるのか。
よく分からないし、分かる人がいたら教えて欲しい。


そういうわけで、面白かったのですが、楽しくはない読書でした。coldsweats01
オススメ度は大です。


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2009.05.03

読了記録

20090502
鍵のかかった部屋 ポール・オースター 著

膨大な未発表原稿と美しい妻を残して失踪し、おそらくは亡くなっているだろうと思われている、ファンショー。その原稿を託すようにと本人に指名された、僕。(結局?美しい妻と可愛い子供も受け継ぐことになる。)彼の尽力で世に出たファンショーの小説が世に認められ、主人公はファンショーの伝記を書くことになる。

でも、彼はファンショーが本当は生きていることを知っている。なぜなら本人からと思われる手紙を受け取ったのだ。

・・・ということで、表面的には伝記のために、そして本当は自身のために、ファンショーの足跡を追っているうちに、ファンショーと僕の境界は(読み手にとっても)曖昧になり、、、という話です。

訳者のあとがきに、オースターのことをカルト的な人気がある作家という言葉がありました。なるほど、一般受けはしそうにない。ファンショーと僕とそして読んでいる自分までもの境界が不明になるタイプの人はのめりこんでしまいそうです。私はもう、そうなるような年齢ではないのでcoldsweats01(表面は垢やらかさぶたやらで、境界が曖昧になりようがない。)大丈夫。

・・・ということで、熱狂的オースターファンにはならないと思われますが、彼の作品はまた読みたいと思いました。


この小説に話を戻すと、ラストはぎりぎりまで痛ましくて、ファンショーの存在が消えたのだから、主人公は自ら自分の存在も消してしまうのではとハラハラしましたが、最後の最後に明るさが見えて、不思議にさわやかでした。

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